こんにちは。
突然ですが、皆さんはどんな映画がお好きですか。
(そもそも観ない人もいるかもしれませんが・・・・・・)
私は、観た後に考える余白を残してくれる映画が好きです。作品の作り手が観客を信頼して委ねてくれていると感じるからでしょうか。
心に引っかかる台詞や劇中の状況であったり、主人公のその後を思わず考えてしまう映画に出会えると、観て良かったと思います。
ふとしたときに思い出して、「あれはどういう意味だったのだろう?」と考えることもあります。
イラン映画が好きな理由も、そこにあるのかもしれません。
ショートフィルム Our Kind of Love نوع عشق ما
今日は、そんな余白を残してくれる短編映画を紹介します。
題名は、Our Kind of Love نوع عشق ماです。
主人公は、アフガニスタン出身の少女サミーラです。
ロンドンで結婚相手と初デートをするという内容ですが、私が長々と説明するよりも、そのままご覧いただいた方が良いでしょう。
この映画について
題名:Our Kind of Love نوع عشق ما
監督・脚本:Elham Ehsas、Azeem Bhati
言語:ダリー語(※1)、英語 (全編に英語字幕有り)
時間:15分42秒
動画共有サイト:Vimeo(※2)
※1:この映画、ダリー語の勉強にもなります。ただし、監督と視聴者のコメントやりとりを読むと、アフガニスタン出身の俳優(女優)を見つけることができず、イラン系の方を起用したため女性のアクセントはイランのペルシア語になっているとのこと。
※2:Vimeoは動画制作者のみのアップロードを許可している動画共有サイトです。
感想(これから観る方は、まだ読まないでね)
ご覧になっていかがでしたか?
サミーラとハールーンの孤独や寂しさが伝わってくる映画でした。
愛する人と結婚できるはずのヨーロッパでも、元恋人とは結ばれなかったハールーン。元恋人とはقسمت (qesmat、運命)ではなかった。ヨーロッパには出会いが沢山あるのに、それでも孤独を感じるとつぶやきます。
サミーラは、家族、友人、大学生活すべてをアフガニスタンに残して、見知らぬ人と結婚するためにロンドンに来たことをハールーンに伝えます。手元にあるのは妹からもらった手紙と写真だけ。
最初はぎこちない2人の会話が、作品終盤に本音や問いをぶつけ合うところから、これからの2人の愛の形が見えてくるような気がしました。
愛については、『愛するということ』(エーリッヒ・フロム著)という本でこう書かれています。(第1章 愛は技術か p.12)
愛は技術だろうか。技術だとしたら、知力と努力が必要だ。それとも、愛は一つの快感であり、それを経験するかどうかは運の問題で、運がよければそこに「落ちる」ようなものだろうか。この小さな本は、愛は技術であるという前者の前提のうえに立っている。しかし、今日の人びとの大半は、後者のほうを信じているにちがいない。
この映画の主人公2人にとっての愛の形は、「落ちる」ものではなく、知力と努力で育んでいく愛なのでしょう。お見合い結婚でも、たとえ恋愛結婚であってもそうなのかもしれません。
最後の最後に、サミーラさんが少し微笑んだように見えませんでしたか?
お互いが抱えている孤独や不安や寂しさを伝え合うことで、互いが互いを必要として支え合う関係に繋がっていく暗示のような微笑みだと思いました。
無駄なところがないのに、人物像がしっかり伝わってくる脚本も、特に終盤の俳優さんの演技も素晴らしかったです。
それでは。